2020年8月31日月曜日

猫越岳

この季節に伊豆の山に行くっていうのはかなり珍しいことです。仁科峠の牧場の牛たち、青空の下この景色は素晴らしいものでした。


いただいたリクエストは南アルプス深南部の黒法師岳。ところがアプローチの林道がことごとく使えないとわかった翌日、じゃぁトレーニングで地図読みという流れでした。なんで猫越岳かっていうと、リクエストいただいたのが静岡の方だったということだけです。


猫越岳周辺は緩やかな地形の中に変化があり、一本の等高線の変化を見落としてはいけないなど、地図読みにばっちりです。猫越岳南の三等三角点の点名: 猫越峠(三)と右に893m標高点。


重機が入って間伐をしたようで、昔の道「吉奈歩道」は無視され荒れ気味でちょっと戸惑いました。


アセビとブナの森。左のちょっとした小山は、伊豆山稜線の猫越岳の展望台。


この展望台は本当に眺めが良いお気に入りの場所。


1026m標高点を振り返りました。草原のように見えるところは素直にそんな気持ちの良いところでした。


展望台でゆっくりしていたら登場した富士山。富士山右下のとんがりは達磨山です。


猫越岳の山頂から南に猫越峠を過ぎると登場するブナの大木。


猫越岳から三蓋山(みかさやま)にかけての主稜線には、驚くようなブナの大木が点在します。そんなブナの樹々の存在がこの稜線の魅力になっています。


北の沢地形に下りて猫越峠の古道に至ります。僕には詳細はわかりませんが、中伊豆と西伊豆の交易の古道です。その道形が残っていて地形図の徒歩道と一致しています。この道を確認して道なりに猫越峠に登り返しました。


峠を越えてしばらく下ると出会える馬頭観音。この観音様に会ったあと、猫越岳南の三等三角点、点名: 猫越峠(三)を目指しました。


道しるべでしょうか?稜線に上がったらありました。猫越越は猫越峠そのものだし、辺という風に読める字はそんな感覚だったのかな?


怪しくなった空模様。大丈夫、雨は来ませんでした。


猫越岳南の三等三角点、点名: 猫越峠(三)の西の天国のような場所の入り口。


南から見た猫越岳です。一日中ずっと地形図と地形だけ見てきて最後にこの景色、本当にこの経験をした方もれなく幸福感に満たされるようです。それは僕も同じです。難解な地図読みの後に出会える絶景です。


西伊豆方面の景色。海沿いの尖がりは烏帽子山162mです。今回初めて同定しました。


マツカゼソウがたくさん咲いていました。 


古道に合流ですが、地形を地形図で読みながら行動しています。


びっくりした出会いのツチアケビの実。


最後は滝見林道という林道を下りましたが、下るにつれ凄まじい水の流れの音が谷に響いていて、こんな立派な滝が林道脇で見ることが出来ました。林道の名前、そのまんまって良くわかりました。登りはじめのゆるい尾根の池マークからの流れです。そこは大きなワサビ田があるんですけどね。


少しでも流れがあるところにはワサビ田です。


結局雨は降らず、仁科峠に戻る牧場地帯では青空が広がりました。


 

2020年8月25日火曜日

滝子沢左俣

白山書房の2000年出版の「東京周辺の沢」という沢登りのルート図集は、丹沢、奥多摩、奥秩父などの沢が中心なのですが、中央線沿線の滝子山の滝子沢が載っています。春の初めや秋の終わりが登るには良い季節だと思っていますが、時間が出来たのでふらりと出かけました。


マツカゼソウがたくさん咲いていました。漢字で松風草、涼しげな風情のある名前ですが、ミカン科の草で独特の臭いがあるので鹿が食べないそうです。葉っぱの形が独特なのですぐわかります。


工事用の道路を利用して建設中の最上部の砂防堰堤まで登りました。


河原は真新しい石がゴロゴロ、伏流になっていて水の流れはありません。


標高1000mを越えたら出てきた水の流れ。遡行図通りの一番初めのチョックストンの滝


二俣には大きなケルン。右奥が本流です。


30ⅿナメ滝。ナメというよりブロック滝っほうてが合ってるかな。


40ⅿスラブ滝。


傾斜のない段々の階段のような滝。初心者でも楽しめるというふれ込みの滝子沢左俣です。


倒木帯、これは沢に限ったことではなく、最近の気候変動で雨の量や風の強さが変わってしまった現象だと思います。当然水が集まる沢では水が土砂を運びます。


ナメ滝の一条クラック、水が流れる真ん中を登りましたがこの滝目的に来てもいいかもと思えました。面白かったんです。


中間部に残置ハーケン。


落ち口手前でこのクラックを使おうと手を入れたら先客がいました。こんな所で何してるんだろう?


左を短く巻いた8m滝


またまた倒木帯


右にバンドが走っていてうまく使えました。沢を離れます。


ガスに包まれ回りの様子が全くわからない中、ピンポイントでひょっこり山頂に出たのでびっくり。


となりの寂惝尾根を下りました。滝子山南稜とも呼ばれる上部に岩場のある急な尾根です。


大鹿林道に出ました。笹子川支流大鹿川が起点の林道です。コンパクトに周回できる良いルートでした。国道20号の笹子町白野集落で笹子川に合流する滝子沢です。集落から滝子沢林道というような表現の地図もありましたが見つけられませんでした。

 

2020年8月23日日曜日

編笠山

釜無川林道から見た編笠山です。奥に鋸岳第一高点が見えています。編笠山といえば八ヶ岳の編笠山が一般的ですが、鋸の北にも2514mの編笠山があるんです。釜無源流の続きです。


角兵衛のコルで泊まった翌朝は少し寝坊をしてしまいました。とりあえず第二高点まで行くことを決めての出発。角兵衛のコルから第一高点まではすぐです。


奥にうっすら御嶽が見えてます。一応いい天気。


間違いなく通過するために小ギャップは懸垂下降。


これはややこしい話なんですが、純粋に尾根通しに進むとしたら第一高点の次が小ギャップで、その次に第三高点が登場して大ギャップ、最後に第二高点です。第三高点への岩稜には沢山のタカネビランジ。


第三高点から見た第二高点。奥には甲斐駒です。
 

大ギャップを覗きましたが第三高点から大ギャップの底は見えません。第一高点から第三高点を通過して大ギャップに立つというのは比較的容易です。でも大ギャップから第二高点に登るルートは難しいルートファインディングです。岩が安定していないし(ボロボロ)、悪い草付きの連続です。見下ろした壁、第二高点から草付きを下って大ギャップに降るには最後は見えている垂直の壁の懸垂下降です。その懸垂下降には40ⅿザイルが2本必要です。僕らは30m2本なので10ⅿも足りません。第二高点から大ギャップのヘリまで行ってみて、写真の左のブッシュに弱点がないかということを偵察してみたのですが、無理はしないことに決めました。他の目的があったからでした。


第三高点から第一高点の方に戻った途中に鹿の窓はあります。


鹿の窓の穴を通過すると鹿の窓ルンゼ。小石の落石が頻発する結構ヤバいルンゼ(急傾斜の沢)です。下った最後のバンドは雨に流されたのかスッキリきれいになってました。ルーズな小石が乗っかったいやらしいバンドだったんです。


バンドの先の大ギャップルンゼ。ここも花がすごかった!


大ギャップルンゼの対岸、第二高点から西に延び尾根に取り付くために幅が広くてゆるいルンゼの右端に取り付きます。


ひと登りで第二高点です。修験者の鉄剣と第一高点。トレースを大キレットのヘリまで行ってみたけどギャンブルは出来ませんでした。当初は30ⅿロープ2本で大ギャップに下れるかなんて考えていましたが諦めました。大ギャップルンゼから鹿の窓ルンゼに入って鹿の窓を通過して戻ることにしました。来た道を戻ったということです。過去の経験から第二高点から大ギャップに懸垂する場合は40ⅿの垂直の懸垂なんです。


第二高点のエスケープルートから下って、大ギャップルンゼから見た大ギャップ。


大ギャップルンゼから鹿の窓ルンゼを登り返してもうちょっとで鹿の窓。岩稜にある奇跡的な穴を通過するんでかなり特別な気分です。


小ギャップを登り返して第一高点を経過して、角兵衛のコルでツエルトを回収して三角点ピークから編笠山を目指しました。ロープを使うような悪場はないにしても読図が難しかった下り。写真は編笠山の山頂です。三角点ピークと第一高点が後ろです。


地形図で示します。フリーハンドの赤丸のエリアが難しい読図でした。何度も修正しながら下りました。赤のポイントから青のポイントまでの間です。その先には1839m標高点があってそこからはかなり簡単な読図になります。


こんな植生の下り。一気に下りましたが何度も修正したりしたので編笠山から中ノ川出合まで3時間もかかってしまいました。


中ノ川出合の上流の堰堤に無事到着。登りながら観察していて狙ったこの堰堤に出てきた時はガッツポーズです。お疲れさまでした!