北海道の山のもう一つは大雪山旭岳からトムラウシ山の縦走でした。こちらが目的だったかもしれません。地図だけではなく実際歩いてから読みたいと思っていた「トムラウシ山遭難事故報告書」の存在がずっと頭の隅っこにありました。。
旭川駅と旭岳ロープウェイを結ぶ、いで湯号に旭川空港から乗りました。バス路線のちょうど中間点が旭川空港バス停です。
2009年7月14~16日、真夏にもかかわらず8 名もの人が低体温症で亡くなった(同日の大雪山系では合計10 名)というツアー登山。この有名な遭難は世界にも類を見ない大量遭難でした。
2010年3月1日、公益社団法人日本山岳ガイド協会の事故特別委員会が調査・作成した「トムラウシ山遭難事故報告書」を帰ってからしっかり読みました。
写真はバスから見えた旭岳。
地図だけ見て決めたルートが、遭難したツアー登山と全く同じだと気付いたのは後からでした。旭岳は北海道で一番高いピークです。
旭岳の登山道は火山性の砂礫の歩きにくい道で、ロープウェイ山頂駅から旭岳山頂までの標高差は600mです。山行が始まったばかりのこの時が一番周りが見えました。奥の雲の間からトムラウシ山の山頂、左のとんがりが忠別岳。
金庫岩
旭岳山頂の一等三角点 点名「瓊多窟(ぬったく)」ぬたっくはアイヌ語みたいです。
旭岳から東に200m下って裏旭キャンプ指定地です。ガスった時のための誘導ロープが見えますが、ここの下りはとても急で注意です。富士山の大砂走の下地が固くなったみたいな斜面です。
間宮岳分岐。右に凌雲岳で、ほぼ正面が北鎮岳。北海道で2番目の標高です。
御鉢平カルデラ。凌雲岳の右奥に黒岳。黒岳の向こうには層雲峡からの黒岳ロープウェイがあります。手前の砂礫がとても変わっていて、写真はその色を上手く拾っていませんが、赤や黄色に色分けされていて不思議な天然カラーでした。
北海岳
山頂にあった宮標石
北海岳から北海平に進み(ほんとにたいらでした)、白雲岳の登りでは崩れた登山道に手が入っていました。
白雲岳分岐の標識にはヒグマ情報。この警告は何度も登場して、それぞれのポイントにそれぞれのヒグマに関するコメントが書いてありました。
登山道の整備はまさしく「大雪山山守隊」の方々でした。
白雲岳避難小屋は大雪山のベースだと思いました。キャンプ指定地でもあるし、食料を入れるフードロッカーという食料保存ボックスも設置されています。
チングルマは綿毛になっていても美しいと思いました。奥は雪渓です。ここからはアップダウンも多少ありますが、忠別岳や化雲岳のピークがポイントになります。遠いし長いです。
まるで散乱しているように板状の石ばかりのスレート平。
コマクサの株がたくさんあると思ったら、咲いているものもありました。
今回は実物に会うことはありませんでしたが、糞はいくつも見ました。
忠別岳の手前に忠別沼が見えています。木道が設置されていますがかなり古いものなので注意して歩きます。忠別沼手前から木道が終わってハイマツ帯に入るまでは、カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)と呼ぶにふさわしい場所です。
メアカンキンバイ(雌阿寒金梅)
すっかりガスに包まれた忠別岳
忠別岳からの下りでうるさかったハンノキ。
忠別岳避難小屋。ここに一晩お世話になりました。古いけど使えます。1日目に白雲岳に泊まった場合はここではなく、この先にあるヒサゴ沼避難小屋に泊まるようです。この日の行程の旭岳ロープウェイから忠別岳避難小屋までは約20kmです。
同宿したのは東京からの親子とデンマークからのカップルでした。デンマークのカップルが前日のテント泊で雨に会い、濡れたテントを外に干すというので、持っていたロープを使って小屋の中に吊るして干しました。
忠別岳避難小屋を発つ朝、わかりにくいのですがエゾシカが2頭こっちを見ています。
稜線に戻ってあたらしめのヒグマの糞。
朝露でびっしょりになりながら、ハイマツの下に特徴のある葉っぱ。調べたらイソツツジ(磯躑躅)磯って海岸ですが、これはエゾツツジが誤って伝えられたのではないかと言われていて、別名エゾイソツツジ(蝦夷磯躑躅)とも呼ばれているそうです。花期は6~7月。
五色ヶ原の木道のヒグマの糞。
五色岳から化雲岳~ヒサゴ沼周辺もカムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)と呼ぶにふさわしいところです。
ヒサゴ沼分岐でふりかえったところですが、なだらかなここらあたりで一番目立つ化雲岳の化雲岩です。
ヒサゴ沼分岐から稜線を進むと正面にトムラウシ山が見えるはずが...
ここを下るとコルで、やはりヒサゴ沼の分岐で沼から北西のコル。ヒサゴ沼避難小屋からトムラウシ山に行く場合必ず通るコルです。
天沼は天国感があるきれいなところ。
真ん中に黄色のマーキングがあります。ルートファインディング必須の場所です。トムラウシ山の特徴的な岩ゴロゴロが始まります。
岩セクションがいったん終わると日本庭園と呼ばれるやはりカムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)
ロックガーデンと呼ばれている岩場のはじまり。
ロックガーデンが終わってゆるやかな丘のような地形の先に北池とトムラウシ山。右のピークが山頂です。
山頂に向かって登っていると登場したエゾシマリス。トムラウシ山に近づいて岩がゴロゴロしたところではナキウサギの鳴き声が盛んに聞こえていましたが、しっかり見えたのは一度だけでした。
トムラウシの山頂はとてもにぎやかでした。南のトムラウシ温泉の上の林道終点からの日帰りの人たちです。トムラウシ短縮コースと呼ばれる標高約900mがスタートのコースですが、往復の距離は約17km、コースタイムは12時間です。簡単ではないし、山頂の百名山ねらいの人たちの様子を見ても不安だらけに思えました。
トムラウシ山山頂
山頂から見える景色
山頂南の南沼キャンプ指定地。トムラウシ分岐といわれるのは、山頂に行かないで山頂を巻いて北沼に行けるからです。
トムラウシ公園といわれるここもです。カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)です。チシマギキョウが咲いていました。
トムラウシ公園の最後に登場する目立つこの岩の名前名わかりませんが、右奥に50mくらいの登り返しがあって小尾根をまたぎます。この日は雷雨に見舞われ肝を冷やしました。
前トム平というポイントからコマドリ沢に下ります。
コマドリ沢分岐。以前はカムイサンケナイ川沿いに道はあったようですが、沢沿いから尾根に付け替えられた登山道で約100mの登り返しはとても辛い。
登り返した尾根は大きな尾根で、なかなか標高を下げてくれないので精神的につらい登山道です。加えてこの泥んこです。
簡易的な木道。整備をされた方に感謝ですがちっとも高度を下げない大きな尾根です。
カムイ天上から見えたトムラウシ山2141.2mと前トムラウシ山1649m
この石段も辛かった~。1143m標高点の下です。
標高1050mの短縮ルートの分岐。短縮ルート分岐から約10分で駐車場です。トムラウシ温泉へのルートは1時間以上かかります。
トムラウシ温泉登山口は650mの標高です。
トムラウシ温泉東大雪荘はホテルです。
泥んこを洗い流すスペース。
トムラウシ温泉東大雪荘に泊まったのは最寄りの新得駅までの送迎があるからでした。それでも宿から新得駅までは約1時間です。北海道の車窓を楽しみながら新千歳空港に移動して帰りました。