2025年8月6日水曜日

大雪山周回

大雪山からトムラウシ山の縦走の後、そのまま北海道に残って大雪山を周回しました。1泊2日でというリクエストだったので、無理のない内容でと思ったからでした。大雪山最大のカルデラ、お鉢平を中心に反時計回りに廻りました。スタートはまたまた旭岳ロープウェイ。姿見池と噴煙です。


風は弱いものの雲の多い日。旭岳山頂は相変わらず観光客が多かったです。


旭岳から裏旭キャンプ指定地への下り、この時はチェーンアイゼンを使いました。


荒井岳から松田岳のあいだのカラフルな尾根。
荒井岳は層雲峡開発の荒井初一という人物からの名前で、松田岳は松田市太郎という人物が由来で、松田は4人のアイヌの人たちの案内で1857年(明治維新の11年前)に石狩川の水源調査を行い、 忠別岳(1962m)などに登頂し、層雲峡温泉を発見しました。文人大町桂月の桂月岳、松浦武四郎の松浦岳(緑岳)、大雪山の父と言われる植物学者、小泉秀雄の小泉岳などもあります。


稜線で見られた段々の構造土・構造土は土壌の凍結・融解作用によって、地表面に幾何学的な模様が出来る地表のことで、そんな微妙な自然の成り立ちなので、登山道以外は足を踏み入れてはいけないということです。


北海岳を通過し、クジャク岩という岸壁の下を通ります。岩の崩落があったという注意喚起がされていました。


広く見通しが利くところでずっと探していたヒグマ。北海岳の下り、北海沢の対岸で見つけました。直線距離で300mくらいだったでしょうか。そのくらい離れていれば怖くはありません。ただ遠すぎました。


北海沢の残雪


北海沢の渡渉点。もう一つ赤石川の上流部の渡渉もあります。そういった沢筋は雪が融けるのが遅いので花が楽しめます。


赤石川上流部の渡渉から登り返して到着した黒岳石室。白雲岳避難小屋と黒岳石室には管理人さんが常駐しています。


大雪山というピークはないわけですが、東の黒岳は大雪山層雲峡ロープウェイがあり、西の旭岳は大雪山旭岳ロープウェイがあり、どちらを利用するにしてもアプローチが楽です。黒岳石室から黒岳をピストンしました。


翌朝は雨上がりで草木はびっしょり。雲の平をお鉢平のふちを目指しました。


手前の岩場


お鉢平展望台。2020m標高点です。


展望台からの雄大な景色。カルデラの対岸には間宮岳です。


北鎮岳の肩への登りは急登なのですが、素晴らしい登山道でした。


北鎮岳山頂


北鎮岳から中岳を通り、分岐から北に小尾根を下った先にある中岳温泉は楽しみにしていました。ハイマツの尾根から湯舟が見えていました。


全くの自然の中の野湯です。スコップが置いてあって自由に湯舟が作れるとの情報でしたが、スコップの柄は折れていたし、そこまでの噴出量ではないので足湯を楽しみました。


こんな景色の中の野湯です。


中岳温泉から分岐の裾合平まではお花畑が期待できましたが、ピークはとっくに過ぎていました。ここも木道の再整備が進んでいるようでした。


大雪山の稜線を反時計回りに一周して、旭岳ロープウェイの姿見駅に戻りました。だいたいお昼の時間でこの気温。ロープウェイで下って山行が終わっりました。一週間で二つの山行をした北海道でした。山行の内容ばかり書いてきました。以下に主だった花の写真を載せますのでお楽しみください。


メアカンキンバイ(雌阿寒金梅)北海道の固有種で高山帯(知床・阿寒・大雪山系と羊蹄山)に分布です。
 

ミヤマリンドウ(深山竜胆)北海道、本州の中部以北に分布です。



ウスユキトウヒレン(薄雪唐飛廉)分布は大雪山系,夕張山系,北日高山地,羊蹄山


チシマツガザクラ(千島栂桜)国内では北海道の高山帯と早池峰山だけに分布。ちょうど花が咲く時期でたくさん見ることが出来ました。


チシマクモマグサ (千島雲間草) クモマグサは雲がかかるほどの高山に咲く花という意味。



エゾコザクラ (蝦夷子桜) 北海道特産の小型のサクラソウ。


エゾコザクラのアップ


イワブクロ(岩袋)の白花。北東北から北海道の花。


左が普通に見られるイワブクロ、右が白花。並んで咲いていました。高山の火山性の砂礫地に生えます。


見事なイワヒゲ(岩髭)の群落。


エゾノツガザクラ(蝦夷の栂桜)ピンクのアオノツガザクラって感じです。


ムシゴケ、高山帯などで、他の高山植物と混ざって見られる地衣類の一種です。これだけあると迫力がありました。


 クモマユキノシタ (雲間雪の下)  大雪、夕張、日高山系の湿った礫地に生える多年草。


中岳温泉の周りの岩を覆っていたイオウゴケ。全体的に緑がかっていました。


イオウゴケのモンローのくちびる。


エゾノハクサンイチゲ (蝦夷白山一華)ハクサンイチゲもエゾとつくと特別感がありました。


エゾノリュウキンカ(蝦夷立金花)葉、茎、花も食用となり、北海道では初夏の山菜の代表格といわれます。

大雪山からトムラウシ山

大雪山からトムラウシ山へ歩いた山行のことを書きます。参加された皆さんがこれまで、いろんな山で経験を積んで行動や生活のスキルを上げて、その集大成みたいな山行になりました。お疲れさまでした、ありがとうございました。
大雪山旭岳~北海岳~白雲岳避難小屋(泊)~忠別岳~五色岳~ヒサゴ沼避難小屋(泊)~トムラウシ山~トムラウシ温泉という2泊3日のコースの全長は約43㎞です。初日は移動日で、翌朝の大雪山旭岳ロープウェーの始発に乗るために麓の旭岳温泉に泊まりました。写真は旭川空港です。


空港を下りて真っ先に飛び込んできた気温。37℃って・・・

旭岳ロープウェイの始発は6:30、結構な行列ができていました。ロープウェイの麓駅からロープウェイ姿見駅というトップまで約500mの標高を稼げます。

山頂駅の近くに姿見の池があるので、山頂駅の名前が姿見駅なのでしょう。ロープウェイが出来る前から登山道はあったようで、旭岳温泉の登山口からとりあえず目指した姿見の池。

姿見駅周辺は観光客も多くて、特に外国人が目立っていました。北海道で一番高い旭岳への登山道は火山性の砂礫の道で、噴煙のあがる爆裂火口の南のふちを登っていきます。とても天気が良く、十勝連峰やトムラウシ山もしっかり見えました。

こんな風に標高2000mを越えなくても森林限界の上なので、天気が崩れると一気に厳しくなる稜線歩きが続きます。

旭岳山頂は2290.8m


山頂から東に裏旭キャンプ指定地に向け下ります。この下りはザレて傾斜もあるので注意です。

新井岳の登りで見かけたキタキツネ。こんなところにもいるんだ!この姿を見た瞬間、高い山だからといって沢水をそのまま飲めないんだと思いました。キタキツネが感染源のエキノコックス症の心配です。

大雪山系最大のカルデラ、お鉢平。外輪山のピークは左から北鎮岳、凌雲岳、桂月岳、黒岳です。


お鉢平を眺めながら北海岳まで来ました。ここから南下します。


北海平のチングルマのお花畑。


白雲岳避難小屋です。避難小屋ですが、緊急的に使う前提はあるでしょうが、夏のシーズンには小屋番が常駐している白雲岳避難小屋です。使用料と運営の協力金としてひとり3,000円支払いました。小屋に入れるかどうかは先着順なので、万が一のためにそれぞれテントなりツエルトを持って、いつでも幕営できるよう準備をして縦走します。当然食事の提供あありません。


水は結構どこでも取れますが、やはりエキノコックス対策として浄水するか煮沸するか、小屋についてまずしたのが水作りでした。僕はモンベルで購入した浄水器を使いました。コツはありますが力づくで一気に水が作れるので重宝しました。


2階建ての白雲岳避難小屋。


白雲岳避難小屋を早朝に立ちました。晴れた朝、素晴らしい広大な景色!最奥の王冠のようなトムラウシ山の手前になだらかなピークがいくつか見えました。とても稜線とは思えない長大な高根ヶ原を行きます。まずは忠別岳を目指します。


たくさんの高山植物に出会えますが、砂礫地には必ずと言っていいほどコマクサが咲いていました。振り返って旭岳が見えました。


忠別岳と忠別沼。


忠別沼手前のチングルマの群落


忠別沼のワタスゲ


忠別沼でふりかえり、左端に旭岳、右端に白雲岳です。


ハイマツの松ぼっくり。写真には撮れませんでしたがギンザンマシコの雌が食べていました。ギンザンマシコは、北海道の大雪山や利尻岳のハイマツ帯に生息・繁殖していて、北海道レッドリストでは準絶滅危惧種に指定されている希少性の高い鳥です。本州でハイ松の実といえばホシガラスですが、ここではギンザンマシコの食痕が目立っていました。


チシマツガザクラの群落


忠別岳山頂とトムラウシ山


忠別岳山頂の南側は、ハイマツとミヤマハンノキの枝が邪魔する登山道で、一気に下ります。


南側から振り返った忠別岳。


南に進んでいます。写真中央の小さな突起が五色岳。


忠別岳と五色岳の最低鞍部の東に忠別岳避難小屋があります。縦走路から外れていますがトイレを利用しました。


最低鞍部は蝶の道(「蝶道ちょうどう」といい、蝶が特定のルートを繰り返し飛ぶ習性のこと)でした。はっきりしたことはわかりませんが、南下している僕らと同じ方向にたくさんの蝶々が移動していました。確認できた種類はコヒオドシ,アサヒヒョウモン,クジャクチョウだけでしたが、大雪山にはここでしか見られないウスバキチョウという蝶もいるそうです。写真に3匹の蝶が写っています。


五色岳の登りは背の高いハイマツ。


その登山道も、このくらい枝が払われていて歩きやすかったです。と思うのも、忠別岳の南が足元が見えないくらい枝に邪魔されていたからでした。


五色岳から化雲岳のあいだは湿地帯で、木道が設置されています。化雲岩が見えています。


ピンボケですが、写真の右側にいるのはエゾユキウサギです。僕に気づかず、ゆっくり跳ね上がっては止まるということを繰り返していました。





2泊目のヒサゴ沼避難小屋に向けて下ります。この木製の変わった階段がそれぞれ独立していて連続性がないためか、流水がひどいところはひっくり返っていてとても歩きにくい道でした。


真新しい登山道整備。


ヒサゴ沼避難小屋にやっと到着。この避難小屋もそうですが、先着順で埋まっていくので、場合によっては小屋利用は出来ないということもあるので、テントなりツエルトなりの幕営装備を持っていないととんでもないことになると思います。幸い僕らは小屋が利用できました。


登山道整備をしてくれていた作業員の個室。


翌朝は雨。ヒサゴ沼の西の雪渓登りから始まりましたが、風がやや強めで2009年(平成21年)のトムラウシ遭難事故を思ったりもしました。時期も同じ7月、雨の中全部で10人もの登山者が低体温症で亡くなった悲惨な遭難でした。2010年日本山岳ガイド協会が「トムラウシ山遭難事故調査報告書」という報告書をまとめているので一読をお勧めします。


ヒサゴのコルからしばらくは日本庭園と呼ばれています。この日は雨と風で楽しむことは出来ませんでした。


天沼


大岩の道はマーキングがされています。


ロックガーデンと言われる急斜面。




ロックガーデンの後は緩やかな丘の様な斜面、登りきると北沼です。このころが一番風が強かったと思います。風速15m/s前後だったと思います。


トムラウシ山山頂。景色と同じようにすっきりしない気持ちだったのは、長い下りが控えているからでした。どこまで下れば風と雨から解放されるか?ということでした。


南沼トムラウシ分岐。


トムラウシ公園と言われる美しいところも楽しむ余裕はありませんでした。


前トム平


コマドリ沢。7/26の段階でヒサゴからヒサゴのコルまでの間の残雪だけで、ヒサゴ沼避難小屋からトムラウシ温泉は雪は消えていました。


コマドリ沢分岐から尾根への登り返しの後もとても長く、こんな泥んこの道です。


何とか着いたトムラウシ温泉東大雪荘。
最後にもう一度リンクを張っておきます「トムラウシ山遭難事故調査報告書