2025年4月23日水曜日

桜峠

今月の初め、静岡山岳自然ガイド協会を作った上野真一郎さんのガイド山行にお邪魔しました。上野さんオリジナルの多くのルートを継承してほしいということで、静岡山岳自然ガイド協会の今年の研修に特別バージョンを準備していただいています。この日は上野さんファンのお客さまとの山行にお邪魔しました。御坂山地北稜の西端、旧三珠町の歌舞伎公園をスタート。


旧三珠町、今は市川三郷町です。旧三珠町のもっと前の大塚村の古くからある集落に入りました。村中の辻に集められた道祖神や庚申塔、馬頭観音なんかを見ながら昔の道のことを想像するのも楽しみです。


この古い地図は明治21年測量、明治24年製版の「市川大門村」という2万分の1の地形図です。作図は大日本帝国陸地測量部で、今の国土地理院の前身です。現在、2万分の1という縮尺はありませんが、地形図作りが陸地測量部に一本化された明治初期に合計921枚が作成されました。「市川大門村」は921枚の内の1枚ということになります。陸地測量部は2万分の1を基本図に作り始めましたが、財政難で5万分の1へ縮尺が変更されました。現在921枚の明治の2万図は国土地理院で購入できます。一枚500円のコピーです。


長昌院というお寺の門前の宝篋印塔(ほうきょいんとう)。2万分の1の地形図「市川大門村」の赤いマーキングです。


宝篋印塔(ほうきょいんとう)は先祖の供養やを子孫繁栄を願う仏塔ですが、こんなに大きなものは初めて見ました。信州高遠の石工の名前と天明2年(1782年)9月建立と彫られていました。


旧三珠町大塚地区の熊野神社。2万分の1の地形図「市川大門村」の青いマーキングです。


境内にはたくさんの祠があり、多くの神様が祀られていますが、ここの目玉は狛犬です。


簡単に見ることが出来ないのは残念ですが、普通のイメージの狛犬とは違いました。日本でも屈指の古いものだそうで、腹部に「応永12年」(1405年)と刻まれていて、室町時代です。


旧三珠町の大塚地区の果樹地帯を御坂山地に向かいます。まだ山にも入っていないのに古道歩きは盛りだくさんと実感しました。この地域の特産は何といっても「大塚にんじん」です。長くて、太くて、栄養価も高いといわれる1mにもなる長い人参で秋が収穫期です。


ここでまた明治の2万分の1の地形図「市川大門町」に登場してもらいます。明治の地図には人工物がほとんどないのでわかりやすい側面がある一方、地図記号が現在とは違うので難解なところもあります。桜峠の稜線に向かう道を赤い線でトレースしてみました。赤いポイントが桜峠です。このトレースした道の記号も右が実線で左が破線のダブルが道の記号です。ただの破線が徒歩道で、ダブルは徒歩道のワンランク上の幅の道のようです。


現在の林道の途中からひと登りで古道が登場しました。こんな時にも陸地測量部地形図は活躍します。地形図であることは現在の多色刷りの地図とは変わらないので、等高線を読めるわけですから。


えぐれたつづれ織りの山道を進むと馬頭観音。


こんな立派な馬頭観音も登場しました。ただこちらは林道が出来た時に移動されてしまったようで、昔の道形の上にはありませんでした。


道形の上の方に置かれた馬頭観音は、この道を往来する人々を見守っていたのでしょうか。


林道に分断された古道。


桜峠手前の馬頭観音。ここの幅が狭い道の足元が林道ののり面で、5m以上もの高さがあるので、この観音様がずっとこの場所にあったかどうか怪しい感じでした。


桜峠の石祠。ちょうど桜が満開でとても素敵な峠でした。峠の古道を明治の地図で見ると、山の斜面をトラバース気味に芦川の中山方面に下っています。


お昼に作った春野菜のスープ。この時期スーパーに新玉ねぎや新じゃがが登場すると思わず味わいたくなります。


桜咲く御坂山地北稜の末端部分は、開放感あふれ展望も良い素晴らしい尾根でした。


浅間山という小ピークだったと思います。富士講の石碑がいくつかありました。市川大門が発祥の大我講という富士講のグループが活動していたそうで、その痕跡です。


三等三角点「真福寺」、ふもとの道林という集落にあるお寺が真福寺です。


この案内は、この尾根をマウンテンバイクで走る人のためのものです。マウンテンバイクを使って地域貢献をするという法人のものです。山から生活の糧を得ていた人たちが歩いた里山の古道は忘れ去られようとしています。そんな昔の仕事道を使って登山を楽しむ僕らです。


この春、昔の山仕事の道をマウンテンバイクで走るというイベントが行われるようです。はるか昔から使われてきた山仕事の道を、マウンテンバイクで走るということに普遍性を感じないのは、歳を取ったからなのでしょうか?少し残念な気持ちになった山行の最後でした。


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