2025年7月9日水曜日

笊と鋸

ここ1か月で山梨県内のグループの方と、山梨百名山の四天王と言われる笊ヶ岳と鋸岳に行ってきました。その2つのガイド山行で、ガイド山行ではない普通の登山者が今までとは違うと感じたことを書きます。おおまかにいえばタイパ(タイムパフォーマンス)ベースに行動しているのでは?ということでしょうか。ピークハントだけをシンプルに追求するのでどちらの山も圧倒的に日帰り登山者が多いのです。どちらの山も何度もガイド山行をしてきました。基本的に1泊2日のテント泊。体力に自信のない方とは2泊3日で登りました。以前も日帰りで登る人はいたけど、最近は軽量化でとにかく山頂という傾向のようです。
写真は笊ヶ岳のアプローチ、トロッコ道の最狭部の滝になっている危険個所。


笊ヶ岳、広河原の渡渉点。流れをわたり、奥沢谷を離れ怒涛の登りの始まりです。


布引ガレのトップは大好きな場所です。


この1か月の間には甲斐駒の黒戸尾根にも登りましたが、広河原渡渉の後の怒涛の登りを布引山までくるとつくづくこちらの方が厳しいわー!と思いました。布引山山頂の西側はシラビソが伐採されて展望が良くなりました。


布引山山頂で幕営。タープの威力は朝方降った雨で実感されたと思います。


高曇りでしたが、約束の大展望は守られました。しっかり北岳まで見えましたから。


何とかギリギリに定番の小笊と富士山。装備は増えますが、老平を出発して布引山で幕営、暗いうちから行動して笊ヶ岳の山頂に立つと広がる大展望です。日帰りだと雲が上がってきてしまい難しい大展望でしょう。前日、老平の駐車スペースは車であふれていました。布引山の幕営地がいっぱいだったらどうしようと歩き始めたのでした。笊ヶ岳山頂を後にしてすれ違う登りの登山者を目にして、そんな僕の発想と全く違う感覚で日帰りしていると思いました。その日の笊ヶ岳の8~9割は日帰りだったでしょう。多くは軽装が気になる登山者でした。


そして1か月後の鋸岳です。釜無川ゲートから9Kmの林道を歩き、横岳峠に幕営して、翌朝第一高点をピストンして、最後はやはり9Kmの林道歩きというのが一番確実に第一高点に立つプランだと思います。初日は横岳峠までということでゆっくりゲート手前の駐車スペースへ行くと、すでに18台もの車が停められていて驚きました。


釜無川林道は令和元年の台風でズタズタになりました。釜無川右岸に流れ込む中ノ川という最大の支流をひと登りした大平への道は砂防の関係で、ほぼ復旧されているのが常なのでそこまでは問題ない林道だろうと踏んでいました。地形図には書かれていない立派な林道が釜無川林道から分かれ大平に向かっています。なのでゲートから6㎞くらいまでは大丈夫ということです。中ノ川の大平は砂防工事の基地のような場所なのでほぼ確実に復旧されることが多いです。


中ノ川合流の二俣を過ぎると復旧はないだろうと思っていたらその通りで、それなりに踏み跡やマーキングがされていました。単調な林道歩きを自転車で解消ということでしょうか、多くの残置された自転車を見ました。当然日帰り組です。幕営装備を背負ったまま登り基調の林道は辛いでしょうから。


ごっそり橋が落ちた個所はそのままでした。橋が架かっていたのは戸草沢です。


今回注意して気が付いた赤いテープ。橋が崩落した手前200mくらいで河原に下ります。戸草沢の合流点の上流で急斜面を登り返して林道に復帰できる合理的なラインでした。


さらに数か所道路が崩落した際を歩くところがありますが、さして問題にはならないでしょう。


やっと!という感想しかない9㎞のサイン。稜線の向こう側は戸台川です。さらに林道は奥のログハウスまで続いていますがズタズタな道。目的地は横岳峠なので林道を離れてそのまま河原を歩いたほうが無駄がありません。ログハウスに行くにしても河原から行った方がいいでしょう。


標高点1534mから奥は源流で、複数の沢が合流する場所ですが、林道をズタズタにした台風の時に多くの土砂で埋まってしまいました。横岳峠への急な小尾根に取付くまで左岸から右岸へ、そして左岸へというルートでしたが、ずっと左岸通しに行けるとわかった今回でした。テープ等のマーキングが以前のものも含めて残っていて、多くの登山者がルート取りに難儀していました。簡単に言うと登りの時はずっと右側を歩いていけばいいわけです。


この標識はいまでもしっかり残っています。この先から急登の小尾根が始まります。


左岸の水場。水源の標識の先のここが最後の水場です。以前はもう少し先から釜無川の水源の水場がありましたが、土砂に覆われて流れが変わり近づけない現在です。


横岳峠の幕営。書いてきた通りほぼ日帰りで鋸岳に登る登山者ばかりなので、水場はないもののフラットな横岳峠は幕営適地で、僕ら以外には単独の男性が二人だけ。競争にはならず安心しました。


最近、焚き火をするときは必ず焚き火台を使います。環境にダメージを与えないためですが、今シーズン初めて使ったTOKYO CRAFTSの焚き火台「マクライト チタン」、545gという本体重量に惹かれましたが、実際使ってみてダメだなと思いました。小枝も含め完全燃焼しません。ちなみに今まで使っていたブッシュクラフト「ウルトラライト ファイヤースタンド35×44 Ver.1.0」はメッシュ構造で風が通るというか、小枝も含め灰になってしまうので使えます。352gです。


1日目は横岳峠に行くだけなので、しかも翌朝は3:00起きで4:00出発ということで夕食は焼肉にしました。


前日夕方に雨がパラパラしましたが、登り始めてみるみる雲が取れて南アルプス北部の山々がきれいな朝でした。


稜線ではコケモモの花が満開でした。


鋸岳第一高点。感極まった方もいました。ただまだ下りと9㎞の林道歩きが待っています。


ちょっと疲れ気味の方を確保しながら下りました。左は角兵衛沢でスパッと切れています。落ちたらひとたまりもありません。


ハイマツの花が満開でした。枝の先端が雌花で、その下についている赤いのが雄花です。触れると花粉が舞いました。


三角点ピークの下りからの鋸岳第一高点と北岳です。
笊と鋸の山行から最近の登山者の行動パターンを見ることが出来ました。登山は自己満足がベースなのですが、自己完結できれば言うことは何もないのでしょうが、何となく時間に追われ、山頂だけにこだわった登山に思え、軽い薄っぺらな感じに思えました。僕が年寄りの範囲の年齢になったからかも知れません。


2025年6月26日木曜日

蔵王山

山形蔵王に登る日。写真は数年前に米沢あたりで見えた蔵王連峰です。西から見ている形になります。左から地蔵岳、熊野岳、刈田岳、屏風岳です。なだらかな稜線のピークの同定は難しいのですが、米沢あたりから見るととても分かりやすいです。白字のサクランボとラ・フランスは畑です。なんで葉っぱも出ていないのにわかるかというと作物の特徴を理解しているからです。


蔵王山は最高峰が熊野岳ですが、主役はカルデラ湖の御釜でしょう。そこには蔵王エコーラインという山岳道路を使えば普通の観光地になってしまい容易に行くことが出来ます。もちろん天候次第ではありますが・・・そんな蔵王山の無理なく登山としても登りたいと思った今回、標高1100mのライザスキー場をスタートにしました。熊野岳1840mです。


熊野岳と刈田岳のあいだの馬の背が源頭の仙人沢に架かる仙人橋。仙人沢の右岸に中丸山を目指します。中丸山は熊野岳西に延びる稜線上のピークです。


蔵王エコーラインに振り回されることなく、普通の日帰り登山にしたくて登り始めた中丸山への登山道は、想像した通り何の華もない登山道でした。でも蔵王山の普通の日帰りルートとして当たり前なルート設定だと思います。山形蔵王の話です。ライザー中丸山ー熊野岳ー馬の背ー刈田岳ー御田ノ神―ライザ、というコースです。


雨後のガスガスで登り始めましたが、中丸山を過ぎるとみるみる青空が勝ってきました。


ミネザクラ


ムラサキヤシオ


雪国です。それなりに残雪はありましたがアイゼンが必須になるという傾斜ではありませんでした。


山頂手前のコマクサの群生。花は咲いていなくて蕾でした。ちょっと早かったんでした。


山頂への最後のトレース


逆光と難解でよくわからなかった石碑。調べたら山形出身の歌人の斎藤茂吉のものでした。「陸奥(みちのく)をふたわけざまに聳え(そびえ)たまうふ蔵王の山の雲の中に立つ」と彫られているそうです。 


熊野岳山頂。避難小屋と蔵王山神社の社殿が石積みで守られていました。


山頂避難小屋


馬の背に下る途中で見えたもう一つの熊野岳避難小屋。このころからどんどん青空が広がってきましたが、10mを越える風が強かったです。


熊野岳を下って、馬の背が始まろうかという所で崖のふち、突然目の前に飛び込んできた蔵王の御釜!本当にびっくりするくらいの劇的な景色の変化!


強風に負けないようしっかり歩を進めた馬の背。


馬の背から刈田岳に向かう途中、左側には常に御釜のミドリの湖面が見えています。五色に変化する湖面だそうで、東のピークの名前は五色岳です。


刈田岳山頂横の蔵王刈田嶺神社奥宮


刈田岳あたりから見た、御釜と熊野岳。熊野岳から馬の背を経て刈田岳に至る登山道からはずっと御釜が見えていました。基本的にはカルデラ湖ですがどんどん変化する景色が特別でした。山形の知り合いのガイドからは「持ってるね~」と言われました。地元でもなかなか見ることが出来ない御釜だそうです。


冬に一度だけ来ている蔵王です。冬のモンスターの先にあったリフトは使われていないものだと冬に思いましたが、なんとエコーラインの途中の駐車場からこのリフトを使って馬の背に来れる夏限定のリフトでした。観光客が御釜に会うためのものです。


ライザスキー場の向かう登山道を下りました。途中に御田ノ神という高層湿原があります。しっかり咲いていた北東北を代表するヒナザクラ。


ワタスゲが揺れていた高層湿原。


御田ノ神の避難小屋とチングルマの群生。


スキー場のリフトトップの様子は冬と同じでした。


スキー場の中で出会った蔵王修験のお石塔。こんな場所が二つもありましたから、蔵王山は修験の山だとよくわかりました。


快適なライザスキー場の下り


山から下りて、宿泊予定の宿に移動途中にあった道の駅に寄りました。この時期山形といえばサクランボです。購入する気満々で寄ったのですが、高すぎて挫折してしまった山形のサクランボでした。見てくれですが、まともなものは1万円~2万円もしていてとてとても手が出せませんでした。庶民が簡単に買うことが出来ない果物がサクランボなんでしょうか?厳しい現実でした。