2023年1月31日火曜日

高宕山

房総半島の山、千葉県の山2日目は高宕山。君津市と富津市の境界にある山です。房総半島の山と言えば標高も低いし(いちばん高くて標高408mです!)どこ登るの?みたいな感覚でしょう。それでも鋸山や伊予ヶ岳なんて有名ですよね。通はこの高宕山を抑えてください。とても魅力的な山です。写真は高宕林道どん詰まりの登山口です。

整備された登山道は単に登山者のためという感じではなく、何か奥深さを感じさせるものでした。それは高宕観音への参道だからだと思います。

千葉県内陸部は房総丘陵と呼ばれます。凝灰質砂岩や泥岩は、加工しやすくまた耐火性があり建築用石材として利用されました。保田の鋸山が房州石の産地として有名ですが、ここでも採掘がおこなわれていたと思わせる石切り場です。奥の壁です。

ハンマーのようなもので切り出します。コツコツ叩きながら石材を切り出していたのだと思います。この模様のような打痕が垂直の壁全体に着いていました。

見事に咲いたスイセン。奥にトラロープが張ってあり立ち入り禁止の旧石射太郎山。転落事故があったということでした。

ヤセ尾根が続きますが気持ちいい稜線です。


奥の右が高宕山、右が八良塚です。複雑な地形で、写真の山々が標高300mクラスというのが信じられないくらいです。この時は単独の登山者が遭難していて捜索が行われていたようでした。

生活の山でもありました。途中横に伸びる尾根に入り炭焼き窯を見たりしましたし、浅間様という案内は富士山だろうなと想像して寄り道しました。


浅間様の石祠


ぼんやりと富士山が見えました。

高宕観音へのまっすぐな石段。やはり砂岩で作られているので擦り減っています。


案内板
「伝説によれば、奈良時代に行基菩薩が当山を訪れた際、多くの人々のご利益を施そうとして彫刻した霊像といわれている。この観音像の利益を受けた者は数限りないが、 源頼朝が石橋山の合戦に破れ安房の国に渡ったとき、源家再興を祈し、黄金で一寸八分の尊像を写し刻んだ。 そして常に肌身はなさず持ち、ついに鎌倉に幕府を開くに至った。また五穀豊穣、子育てや厄除けなど観音様の霊感のおかげであるといわれ、近郷あるいは 遠方から参詣に訪れる人が絶えなかった。 (高宕山縁起より)」

観音堂の半分は岩をくりぬいて建てられていて、四角いトンネルを一周出来ました。


弘法大師像


観音堂の先、砂岩の尾根をくりぬいた穴を通過して高宕山に向かいます。柔らかめの砂岩が驚くほど加工されている登山道です。手掘りのトンネルや階段として加工されています。エリア全体が一皮むけば砂岩の岩盤です。


高宕山山頂の最後の梯子。

高宕山山頂


高宕大滝の下山道は通行止め、数年前の台風15号で荒れたということでしたが、それなりに手が入っていてリカバーされていました。それにしても岩盤がこんな感じに加工された階段になっていて驚きです。

ふと気が付いた窪み。炭焼き窯跡だってすぐにわかります。

窪みの下を確認すればこの消炭があります。


手掘りのトンネルは林道高宕線に三つありました。


側面が崩れやすいところはどうしようもない感じでしたが、それなりに歩きやすいように手が入っていました。お疲れ様です。


こういう手作りのステップは歩く人のために考えて杭を打つのだと思います。


林道の駐車スペースはこのトンネルの向こうです。なかなか変化に富んだ面白いルートでした。下山です。


房総丘陵の山を堪能した2日間、東京湾アクアラインを通って山梨に帰りました。アクアラインはとても便利です。

2023年1月26日木曜日

花嫁街道

 雪山には興味ないけど、冬でも山を歩きたいという方々と房総半島の山に行ってきました。南房総市和田浦から烏場山(からすばやま266.4m)に登る周回ルート。和田浦には行っていませんが捕鯨の港だったそうです。温暖な地で菜の花や水仙が咲いていました。


横浜からアクアラインで房総半島入り

海ほたるに寄るのはお約束です。

烏場山北の五十蔵集落から港町の和田浦に嫁ぐ花嫁が歩いたということで、尾根上の古道を整備している和田浦歩こう会の方が名付けた花嫁街道。和田浦からは魚や塩、五十嵐からは農産物や林産物が運ばれた道。「日本百低山」というTV番組で取り上げられたルートです。


マテバシイの森。樹木ってまっすぐ伸びる印象ですが、なんでか?斜めに勢い良く伸びていました。長めのドングリがたくさん落ちています。

マテバシイのたくましい根っこ

登山道を整備している方々とすれ違いました。話をしてみるとなんと和田浦を歩こう会の方でした。しかも日本百低山で吉田類さんを案内されたということで、番組で同行した女優さんの話しなんかを聞きました。

見晴台。登山口の花園広場から尾根を周回するのですが、数か所展望が良い場所がありますが、ここが一番気持ちの良い展望台だと思いました。

烏場山山頂の花嫁人形「おふくさん」というらしいです。三等三角点点名「烏場」


下山ルートは花婿街道というネーミング。長者川に下りて黒滝まで下りてきました。遊歩道が整備されていて、登山口の花園広場からは容易に来れます。ちょうど森の幼稚園の子供たちがやってきてにぎやかなひと時となりました。


花嫁街道というのもかわいらしいのですが、初春に縁起の良い赤い実がたくさん見られた尾根道でした。昔の人は万両・千両・百両・十両・一両と順に並べ金運を願いました。すなわちマンリョウ・センリョウ・カラタチバナ・ヤブコウジ・アリドオシです。ピンボケの写真もありますが載せときます。
万両マンリョウ


冬苺フユイチゴ

風藤葛フウトウカズラ、登りの尾根にたくさん見られ、高い木の幹を覆いつくすようにからまってました。ちょうど実が付いているのもあって、日本で唯一のコショウ科コショウ属のツルだそうです。

鵯上戸ヒヨドリジョウゴはツル性の多年草。ヒヨドリが好んで食べるそうです。

伊豆千両イズセンリョウ、赤い実ではなく白い実がたくさんありました。

吉祥草キチジョウソウ 花言葉は「吉事、よろこび、祝福、祝意」など縁起の良いものです。「めったに花が咲かず、吉事があると咲く」ということらしいのですが実際は秋に毎年咲きます。


藪柑子ヤブコウジの別名はジュウリョウ十両です。


蟻通しアリドオシの別名はイチリョウ一両です。「千両万両有り通し」です。


これは臭木クサギ  葉や茎を傷つけると、嫌な匂いがすることからの名。

仁右衛門島

代々の島主は平野仁右衛門を名乗り、現在の島主で推定38代目。治承4年(1180年)、石橋山の戦いに敗れた源頼朝が安房に逃れた際、平野仁右衛門に助けられこの島で平家軍から一時身を隠し、巻き返しを図ったと言い伝えられた島です。

足元に咲いていたアロエの花。

鴨川市太海(ふとみ)の民宿

夕食


2023年1月3日火曜日

シモバシラ

明けましておめでとうございます。2023年も多くの方と山に行けるよう、様々なシーンで頑張りますのでよろしくお願いします。
期間限定のシモバシラの氷の華を見るために甲府の裏山に行ってきました。まずは深草観音。去年はサボっていたブログを今年はなるべく更新するようにという初春の誓いも込め。


深草観音は武田神社の北、要害山の山城の東の岩壁にある奇抜な奥の院です。
~~~図書館の協同データベースで得た情報~~~
臨済宗妙心寺派積翠寺・瑞岩(ずいがん)寺があり、本尊は十一面観音で甲州三十三観音霊場の第一七番札所。北東山間にある深草観音堂は行基開創の伝説をもち、古くは岩洞(がんどう)観音とも称した。山号は深草山、縁起に縁れば746(天平18)年僧行基の開山。御本尊の十一面観音は瑞岩寺にあり。

凝灰岩質の高さ20~30m岩壁の上部に堀りぬきされた三畳ほどの洞穴が観音堂。地上約10mくらいの観音堂にダイレクトに入れる梯子ルートと、わきの壁に鎖が設置されたルート2つがあります。下の写真はわきのルート。

観音堂というか、観音洞の入り口。

なかなかスリリングです。3~4人が入れば満員御礼です。

観音洞から正面の梯子を見下ろす。

 甲府の武田神社東側から旧春日居町(現笛吹市)の里山は魅力的な里山です。昭和を感じるホーローの案内板。

岩堂峠

この日の目的はシモバシラ。シソ科の多年草は登山道わきに枯れていました。


シモバシラのドライフラワー。開花は秋、9~10月だそうです。花は白で30~70cmの高さ。


この氷の華を見に来ました。


冬枯れの森の中で気づくのが難しく、簡単に見逃してしまうシモバシラの氷の華。


シモバシラ、冬になると”霜柱”のような「氷の結晶」ができるところからこの名になったそうです。(ふつうによく見かける”霜柱”とは別の自然現象)。


枯れた茎の根元に出来る氷の結晶。冬、シモバシラは枯れてからも地中の水を吸い上げて茎の上の方まで送り続けているそうで、水分を吸い上げる管の部分が特別に頑丈なのでこうなるらしいです。


その丈夫な送水管ともいえる枯れた茎が割れて少しづつ凍って、この自然の造形美を作るわけです。


地下の根っこから水が送られ、氷点下の気温でシンシンと凍っていく。


一定の条件が整わないと見ることが出来ない自然現象。


1月中旬以降、南岸低気圧が通り過ぎる頃には観察できなくなると思います。期間限定は12月中旬からの1ヶ月くらいでしょう。シモバシラの氷の華を狙って見に行ったのは初めてでした。来週じゃ遅いかもって思ってあせって出かけました。


旧春日居町側の夕狩沢の兜山の登山口に下りて来て、普段見慣れない甲府盆地の東側。たくさんの立ち昇る果樹園の煙。これって甲府盆地の冬の風物詩で、果樹農家の剪定枝を燃やしている煙です。夏の収穫のための剪定作業は冬です。桃と葡萄かな。