所属する静岡山岳自然ガイド協会の研修のテーマはアイゼンワーク。とりあえず手持ちのギアや、歴史を感じるシュイナードのアイスクライミング(1980年出版)などの話をして出発しました。坂下直枝さん訳のこの本では、アイゼンワークはフロントポイントとフラットフッティングのふたつなんだということがわかります。シュイナードはパタゴニアの創業者で、坂下直枝さんはロストアローの社長なんて話も僕が歳を取ったからできることだと思いました。
10年に一度の最大で最長の寒波で…なんていうのは日本海側や北国の話しでしょう。ここ甲斐の国は暖冬継続中のいつもの冬ですが、部分的にはこんな様子の林道歩きから始まる西沢渓谷です。
冬期閉鎖の看板はありました。このエリアの行政区分は山梨市です。冬期閉鎖の看板の地図が、山梨市で有名な温井さんのイラストマップというのが微笑ましかったです。
笛吹川上流の西沢と東沢の二俣に架かる吊り橋から見た鶏冠山。山梨らしい青空です。
寒々しい渓谷の様子
急遽頼まれたピンチヒッターだったのですが、寒いところが嫌いな僕は風や雪やいろいろ厳しい条件を排除して、シンプルにアイゼン歩行に特化するということで、アイスハイキングとも呼べる西沢渓谷での研修でした。氷った遊歩道は確実なアイゼンワークが求められます。でも、アイスハイキングって言えばなんとなくいろんな展開になる可能性を感じます。写真のような氷った場所はアイゼンがないと安全には歩けません。
写真の左斜面が山側、右が谷川です。アイゼンをフラットに置くのにどういう風にということがわかりやすく展開するシュチュエーションです。
橋の手前の斜面が目的地でしたが、全く氷っていませんでした。ある程度低温にはなっている今冬ですが、圧倒的に雨、雪が降っていません。なので染み出しがなく氷も張らなかったということでしょう。山梨は暖冬かつ異常乾燥状態です。
西沢渓谷のシンボル、七ツ釜五段の滝です。
40~50度の傾斜のアイス斜面が西沢渓谷本流を渡った対岸にありました。対岸に渡れたのはラッキーでした。氷った斜面にトップロープを3本セットし、安全を確保してあくまでフラットフッティングにこだわってトライ。アイゼンの爪を効かせないと安定して歩けないという中でのトレーニングです。
トップロープの支点はVスレッド(アバラコフ)。今回はアイスクライミングではないのですが、支点となる立木がないところでも氷ってさえいれば(氷に厚みがないとダメですが)作れる支点です。アイススクリュー一本と細引きとほじくり出すスクリューの穴に入るフックがあれば作れます。クライミング用のナッツキーが使えたのが面白かったです。
雪山も夏山も「歩くこと」が基本です。ただし雪山の場合は、雪や氷の上を歩くための歩行技術が求められます。アイゼン歩行は前爪を利用するフロントポイントとフラットフッティングの2つです。斜面の角度によって様々な足の置き方があるのがフラットフッティングです。どちらにしてもピッケル(ストック)との組み合わせになります。
それぞれ持ち寄ったピッケルのピックの形状や長さなどを比較して刺さり具合を確認したりしました。
最後に登場するVスレッド(アバラコフ)の説明です。
アバラコフ(英語;Abalakov thread、V-Thread、別名:Vスレッド)とは、アイスクライミングを行う際に支点を作る技術、ロシア人の登山家ヴィタリー・アバラコフに由来する。
作るが簡単で、適切に行えば非常に安全な支点を確保できる技術である。この便利さと安全性から、アイスクライマーからは、アイスクライミングの革命と言われる。
アイススクリュー(21cm以上)を使用して、丈夫な氷の壁に2か所V字状に穴を開けて(きちんとV字になるよう誘導するギアもある。)、スリングを通して、ダブルフィッシャーマンを作れば完成である
スクリュー1本より圧倒的に強いVスレッド・アバラコフと言われる。 wiki
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