2019年5月13日月曜日

ナメラ沢

笛吹川の上流は西沢、東沢、ヌク沢、久渡沢と本流から枝になる沢に別れます。そのほとんどが沢登りの対象です。登山史の中の田部重治、木暮理太郎が東沢渓谷を初めて遡行したのが1915年(大正4年)といわれます。僕がはじめて東沢を遡行したのは約40年も前のことで、高校2年の時でした。その時はなんと地下足袋にわらじ履き、時代は変わります。写真は国道140号の西沢大橋で奥の山は木賊山、甲武信ケ岳の南のピークです。


下山後のことを考えて国道わきの駐車スペースからの歩き始め。正面は雁坂トンネルの料金所。秩父に通じる道です。


久渡沢支流のナメラ沢、通常は雁坂峠に続く登山道を途中まで行き、登山道に入って2本目の沢の峠沢を下降して取り付きます。本流はどんなだろうとずっと手前から下降して久渡沢の本流に立ちました。傾斜のないところを選んで下ったのですが最後のところが壁になっていて苦労しました。地形図の等高線からは全くわからないことでした。


2段10mの滝。手前の滝は左手の階段状から登り、上の滝は左上する泥のコーナーを中段まで登って、幅の狭いバンド状を流れの方にトラバースして乗り越えました。


沓切沢出合。


タチツボスミレ 美人さんに撮れました。


ツルネコノメソウ 一番見かけた花。


沢登りは日本独特の登山の形といわれ、登山技術、知識の総合力が求められます。登っていくのも整備された登山道ではないし、水の流れや岩の風化、斜面の崩れなどで常に変化する沢の中です。・読図・天候・生活技術・ビバーク・食料が心許ないと沢は登れません。さらに沢登りでは・水の中の歩行・へつリ・やぶこぎ・ルートファインディング・徒渉・高巻き・ザイルワークなどが求められます。やさしい沢から取り組めば登山技術が自然と身につきます。(レベルアップし、登山の幅が広がります。)写真は5m滝


右が中ノ沢、ナメラ沢は左です。沢がわかれるところで間違えると目的の場所には行けません。沢登りあるあるです。ナメラ沢はその分岐がわかりやすいので、そんなところも初心者向けといわれる所以でしょう。


この沢用の足袋をちゃんと履いてみるというのも目的でした。沢靴はソールがフエルトのものとラバー製のものとがあります。流れの中の岩にヌメリがあると滑ってしまって使い物にならないのがラバーソール。日本国じゅう沢だらけなんですが、どの沢がラバーソールに向いていないかなんてのはわからないので、初めて沢靴を購入する場合オールマイティに使えるフエルトソールをお勧めします。


ナメといわれる一枚岩の滝。ナメラ沢の名前はナメが多いからです。


沢靴のソールのフリクションを利用してヒタヒタと登っていきます。


ナメの写真を連続させているのでまるでナメだらけのナメラ沢か?と思えますが・・・


30年くらい前に登った時よりナメが減ってしまったという印象です。


暑い季節ならウオータースライダーのように滑って遊べます。


30年くらい前とナメラ沢の様子は変わっています。上流からの土砂と倒木です。最近は雨の降り方が変わったと言われます。一度に降る量が多いということです。しかも局地的に。崩れを起こし樹々を倒してしまう水の力。


最後の二俣。


最後の二俣を過ぎるとナメというのはなくなり、ホールドスタンスが豊富な滝が連続します。滝を登ると言ってもロープが必要になる程の傾斜ではありません。元気だったらぐいぐい登って行けるところです。


ネコノメソウの仲間のハナネコノメがまだ咲いていました。好きな花です。


標高だいたい1900mくらいのところ。以前から鉄砲堰と思い込んでいた木組は崩れてました。


「鉄砲堰は昔の材木運搬方法の一つで、川をダムのようにせき止め、そこに浮かせた丸太を溜まった水の力で下流に運ぶ堰のこと。」崩れてしまったけどその跡だと思ったくらい丸太が人為的に並んでいました。でも、今回登ってみてあまりに標高が高いので別な目的で何かをしたのか?と思いました。真相はわかりません。 


ナメラ沢の最後は体力勝負です。黙々と登るしかない急傾斜。


稜線、奥秩父の主稜線に出ました。ナメラ沢は終わりました。


登りながら大菩薩嶺の方がらずっと雷鳴が聞こえてました。


山梨百名山の破風山は西のピークです。


山頂から東にちょっと戻ってわかりにくい青笹尾根の下降点。コメツガの低木のトレースを辿るとこの景色。ナメラ沢西に沿うように伸びる青笹尾根を下ります。


地図に道が書かれていなくてもこの尾根にはトレースがあります。恩賜林の林班の境だからです。山梨には多いのですが、林班の境界は必ず人が入るので、何年かに一回は人が入って手が加えられます。結果僕らが歩き易くなるわけです。


それでも最近の天候の影響か倒木がひどかった。


青笹尾根2025m標高点周辺。


遠くに1855.7mのピークが見えます。三角点名「ナレイ沢」、このピークの南にあるのがナレイ沢。下っているのに長い尾根なので50~60mの登り返しがあるピークです。


ナレイ沢三角点過ぎたら遠くで鳴っていた雷鳴とともに雨がやってきました。瞬間ホアウトアウトに近いくらい真っ白になってルート取りが一気に難しくなりました。雨の中参ったな~です。


雨は降ったりやんだり、この小ピークを越える手前でしばらく足止め。このピークの向こう側で雷神が大暴れ、雷の音にビビッてしばらく時間をつぶしました。防火帯の解放区がずっと続くというのも雷鳴のもとでは恐怖でした。


ずっと防火帯を下ってきて最後、国道140号線鶏冠大橋が見えてもまだまだ終わりじゃないのが辛いとこ。
ナメラ沢、初心者向けの沢入門ルートということで認識されていますが、上りはじめから下ってくるまで日帰りで完結するにはそれなりのスキルがないと無理です。本当に初心者なら青笹尾根を選択しないで、雁坂小屋に泊まってから坂道を下るという計画をお勧めします。ナメが埋まってしまって魅力が落ちたとはいえナメラ沢は良い沢だと僕は思います。


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