池の平小屋の夜は土砂降りの雨でした。池の平小屋で朝食をいただいてすぐに出発しました。小黒部谷から大窓谷(おおまどだん)を登って大窓に出て、白ハゲ、赤ハゲとトレースしたかったのですが雪渓の状態が悪いので諦めたわけです。馬場島に下らなくてはなりません。翌日に上高地でお客様と合流予定です。どうしても夕方には馬場島に下らなくてはなりませんでした。そこで狭義の意味の北方稜線の小窓から剣岳を越えて早月尾根を下ることにしました。確実に馬場島に下るためでした。
池の平小屋から小窓のコルに至る登山道は鉱山道と呼ばれ、大正時代から昭和のはじめにモリブデン鉱石を採掘していた鉱山道です。中間地点までは傾斜もない楽な道。展望台と呼ばれる場所から先が特別なエリアです。
足元の岩石にモリブデンを見ることが出来ました。テカった銀色がモリブデンです
小窓雪渓(氷河ですが)が間近になると登場する右岸の滝。
池の平小屋からの登山道が鉱山道と呼ばれるのは、この鉱山跡からです。小窓雪渓の左岸につけられた登山道は元々ここから採掘されたモリブデン鋼石を運ぶための道でした。
嫌いじゃないからつい足を止めてしまいます。この周辺から石ころを掘り出して運んでいた。奥深いこの地で多くの人が働いていた。その作業道を利用した登山道。
登り詰めた小窓のコルでレインウェアを脱ぎました。風と太陽が動き天候の回復です。
ミヤマキンバイがたくさん咲いていた小窓。
小窓から小窓王の肩まではしんどい登りです。ガスガスの中ほっと和みをくれた雷鳥の存在でした。
ガスガスの中歩みを進めると別な親子が登場した雷鳥。
小窓王の肩。小窓のコルからここまで、垂直方向にひたすら登って暖傾斜をトラバース気味に登って、沢に着いたら真っすぐ垂直方向に登るという感じでちょっと難しいルートファインディングです。
小窓王の肩に登ると池ノ谷ガリーがよく見えます。池ノ谷左俣が眼下に広がります。正面の険しい尾根は剱尾根。みるみるガスがとれて青空が広がって来ました。
池ノ谷ガリーの左にジャンダルム、その上にチンネ。
三ノ窓のコルとジャンダルムの岩壁。
池ノ谷ガリーからの小窓王(こまどおう)の勇姿。そんな言葉が似合うピーク。
池ノ谷乗越に立つと正面のフェースが目に飛び込みます。ホールドスタンスが豊富にあるのでどこでも登れるフェースです。
電波が通じるので諸連絡をしていたらえらく時間がかかってしまいました。源次郎谷(げんじろうたん)右俣を見下ろすと、熊の岩の幕営地にテントが一つ。源次郎谷左俣が剣岳の初登ルートと言われています。
電話をしていた気が付いたこと。チンネのピークの左下に池の平小屋が見えました。赤い屋根です。
長次郎の頭までの稜線上に刺さっていたピッケル。
越えてきた長次郎の頭(ちょうじろうのずこ)を振り返りました。
剱岳の象徴の八ツ峰。こんな稜線のチングルマの葉っぱの赤がとても印象的でした。
剱岳山頂はにぎわっていました。
早月尾根分岐の標識。標識の先端をご覧ください。エビのシッポの様な氷の塊がついています。昨夜の雨が低温で雨氷として張り付いたものです。日影の登山道は凍ったところもあり注意が必要でした。
早月尾根、覚悟はしていましたが長いです。
早月小屋の標高は約2200m、剣岳の標高は2999m。馬場島の標高は760m。
微に入り細に入り、とても細かく地名がコレクトされているのには感心しました。早月小屋から見える小窓尾根のピークの名前が書かれたコンパネです。小窓尾根の北に流れるのが登った白萩川の中仙人谷です。
真ん中に小窓尾根のマッチ箱と呼ばれるピーク。
登山道をどんどん下りましたが、決してやさしくはない登山道です。
ほっと癒してくれる場所もありますが・・・
1920.9m三角点。かなり珍しい柱石でした。
王様のような杉の大木。立山杉と呼ばれる杉の大木が尾根上にどんどん登場します。
決して歩き易いということがない登山道だったりします。
馬場島に着きました。有名な「試練と憧れ」この石碑を見ただけで感動です。
谷川岳の西黒尾根、燕岳の合戦尾根、甲斐駒の黒戸尾根、それぞれ歩いたことがありますが、比較しても早月尾根は第一級です。一般ルートの中で、日本三大急登と呼ぶルートのひとつと認識してもいいと思う早月尾根でした。やったら長い尾根でした。池の平小屋から馬場島までのコースタイム。
池の平小屋-剣岳 4時間30分
剣岳-馬場島 5時間
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