2018年9月11日火曜日

白根三山

長野県のみなさまとのツアー、ピンチヒッターということで白根三山でした。白根三山は北岳、間ノ岳、農鳥岳を指すわけですが、平安時代の「古今和歌集」にも登場する「甲斐ヶ根かいがね、甲斐の白根かいのしらね」などと呼ばれていた南アルプスを代表する山。


台風21号直後の入山で早川町奈良田に通じる県道も、芦安村広河原に通じる県道も通行止めの朝。奈良田から大門沢に入り農鳥岳、間ノ岳、北岳という白根三山に登る計画でしたが、登山口に着くことも出来ない朝でした。早川の濁流。


甲府盆地で県道の情報収集をしていましたが、いてもたってもいられず早川町役場まで行って県道開通のタイミングに合わせ入山と考えました。そこに芦安から広河原の県道の開通予定の情報。


早川町から芦安に移動。御勅使川みだいがわの濁流。


3泊4日の山行、ほぼ全ての日の天候が安定しない予報でした。予定していた奈良田からの入山は叶いませんでした。その日の行動を無理なくそれでも前に進む(後退も意識しつつ)ということを考えていました。自分たちに問題があるわけではないので悩みました。全ては雨、風、増水など自然が相手です。


 広河原を出発できたのは午後。


野呂川のつり橋の向こうに北岳。


野呂川の濁流。1日のうちに早川、御勅使川、野呂川の増水した濁った流れを見ることになるとは・・・滅多にない体験です。それでも始まった3泊4日の山行。


大樺沢の登山道は橋が流され通行止め。この段階ではわからなかった通行止めでしたが、小さな沢も含め増水していたり崩れていたら、と考え安全な樹林帯の道を選んで白根御池小屋を目指しました。


県道が通行止めで予定を変更して、芦安から白根御池小屋までの1日目。どっから山に入れるんだ~と悩んだ朝からは想像もできなかった白根御池小屋の夕日。


2日目の朝。この日の難題は風でした。草すべりを登って小太郎山の分岐で主稜線に出ます。そこから北岳山頂を越え、北岳山荘まで風速15m以上という予報の風にさらされるというのが注意点でした。 


  時にバランスを崩すくらいの風速が小太郎山分岐から始まりました。


草紅葉が始まった3000mの稜線。


肩の小屋の建物が良い風除けになってくれて、ここでもう一度風対策ということで、ウエアのチェックをしながら大休止。


雨の心配のない日でした。強風により体感温度が下がるので防寒、暴風の対応が求められていました。風を通さない手袋と、ジャケットの手首をしっかり締めること、ダウンジャケットは最後に着ること。例えば、一番外側にレインウェアを着るとします、その下にダウンジャケットを着た場合、もし行動中暑くなってウェアの調整をすると、強風の中ダウンジャケットをいちばん外に着ていると一回ダウンジャケットを脱げば良いわけですが、レインウェアの下にダウンだと、レインウェアを脱いでダウンジャケットを脱いで、レインウェアを着るということになります。仕事が増えるわけです。そんな細かなことを口が酸っぱくなるくらい説明しました。


北岳山頂の三角点柱石と富士山。


晴れた写真ですが、西からの強風にさらされています。急な下り。


強風でゆっくり休むことも出来ません。北岳山荘についてほっとしました。


翌日の予報は雨、さらに22mの強風の予想。お昼に着いた北岳山荘だったのでさらに先に出来るトライをこなしました。間ノ岳ピストンです。


間ノ岳山頂三角点柱石と鳳凰山。


とても厳しい環境の3000mの稜線です。言葉にすれば日本で2番目に高い北岳と、3番目に高い間ノ岳を結ぶ稜線です。そんなことがダイレクトに理解できる地形を見ることができます。氷河地形の周りに起きる現象「構造土」です。高山植物が段々に生えてます。地面が凍ったり溶けたりしながらその場所に独特の模様のような感じを形作ります。この場合は段々畑。高山植物が生えていない面は風にさらされています。高山植物が生えているところは風がよけられる急なところ。何が言いたいかといえば、この現象を構造土といいますが、厳しい環境なので、登山道以外を歩かない!ということです。環境に悪い影響を与えるのは人間です。石ころ1個動かしただけで環境が変わってしまう3000mの稜線ということです。


ウラシマツツジの赤が目立ってきました。


3日目は強風で22mの風速。悩みました、どう安全に行動するかということです。午前10時くらいに小康状態かとの期待で、午前5時に朝食のあと9時半まで小屋。10時に北岳山荘を出ました。


4日目の天候もあやしかったので、農鳥岳に進むという選択肢はなくなりました。ではどう広河原に下山するか?幸い3泊4日でもう1日余裕がありました。


本来なら北岳山荘から北岳の山頂を越えて、肩の小屋から下山するというのが比較的安全なルートです。ただこの日は風速22mということで、ちょっと厳しいトラバースルート~八本場~大樺沢左俣~二俣という選択をしました。西からの強風から逃げることができるからでした。


こんなはしごもゆっくり慎重に行けば大丈夫。思った通り風の影響はほとんどありませんでした。


バットレスのDガリー、Cガリー、大樺沢右俣の渡渉も大したことなくほっとしました。


これはDガリー。


もうすぐなくなってしまう大樺沢の雪渓。


二俣には沢沿いに下れないという案内がありました。台風21号の影響です。


雨と強風はそれほどでもなかったのですが、白根御池小屋まで下ってきたら本当に安心した午後でした。


4日目の朝。どしゃ降り・・・


登山道は川になります。


広河原に戻ってきました。狭い行動範囲だったのですが、天気を敵に回すととんでもない展開になります。お疲れさまでした。僕も精いっぱいお伝えできることはお話ししました。皆さんそれぞれの山行にフィードバックできたら素晴らしいと思います。いろんなことを考えた、縦走がかなわなかった白根三山でした。


最後は芦安の温泉。もうけっこう寒い山の中なので有難かった温泉です。


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